「そやな、えるちゃんはまダこっち側来て日浅いけん、知らんのもしゃーないか」
あんまりにも馴染んどるから時々忘れそうになるわあ、とわざとらしい笑みを浮かべた睿霸は、イチからきちんと説明してくれた。
「あのカジノはなあ、謂わばこっちで言う中立地帯みたいなもんナんよ」
「中立地帯、ですか?」
「ソそ。あのカジノにおル連中も、カジノ自体も、誰の敵でも味方でもないっちゅースタンスとってんの。やから、アる程度の見とらんフリはしてくれるわけなんよ。例えバ、勝手にお客がスタッフルームを通っても、隠れて店の備品を使うても、なーんも関与してこうへん。せやけど、表立って騒動を起こスんは御法度や。んなことしたら締め出されるだけじゃ済まんから、そこは要注意事項トして覚えとって」
「わかりました」
こくりと頷いたとき、睿霸とは反対方向に座る影がひっそりと動いた。
「ほな、あらかた説明済んだことやし、お化粧という名の変装のお時間とイこーか」



