うそつきな唇に、キス





人を助けられる力はある。

けれど、他者への情けと若サマの危険を天秤にかけるほどバカではない。


人を助けたあと。その後の責任。

そのあたりを考えると、手を差し伸べる気にはなれなかった。


……こっち側に来て、どちらが悪いのかなんていう判断もあまり区別がつかなくなっていたせいもあるかもしれないけれど。



「……えげツなく合理的やな」

「合理的な判断しかしない人が何言ってるんですか。睿霸に助ける気がないのなら車に戻りま、」

「ほんまにええノ?あの攫われようとしとる子、うちの白服着とるし、何より七席に名を連ネるおじいちゃんの愛孫娘なんやけど」

「……あの、それ早く言ってくれませんか」



そんな大事なことを後出しで言わないでほしい、ほんと。



「というか、よく知っていながら見逃そうとしましたね……」

「え、やって僕あの子とほとんど関わリないし、何よりあんまり好きやないんよね、あの子も、あの子のおじいちゃんも」

「……そのおじいちゃん、曲がりなりにも七席のひとりなんですよね?確か、若サマがよく顔を出してる会合のお相手だったと思うんですけど」