うそつきな唇に、キス





何か、言い争いをしているような声が聞こえた。

それも、かなり近くから。女性と、複数の男性の声が。



「……睿霸、今の聞こえました?」

「なんのこトやろ」

「なるほど、そういうスタンスですか」

「理解早くてほンま助かるわ。……藪蛇になったら敵ワへんやろ?いまえるちゃんオるし。下手なことはしたないんヨ」



帰ろ帰ろ〜、と首の後ろで両手を組んで、車の方へ一歩睿霸が踏み出した、まさにその瞬間。



「は、離してよ!!!」

「おいっ、お前何してんだ、はやくそいつの口塞げ!」

「…………、」

「…………」



明らかに無視できない声量の叫び声と、罵声が聞こえた。


お互い視線を交わし合ったのち、ちら、と。コンビニ近くの裏路地を覗き込むと、黒いバンが一台止まっているのが確認でき。……その中に連れ込まれようとしている女の子がひとりと、連れ込もうとしている男性4人がいた。



「……えるちゃん、助け行ったッたら?」

「そう言う睿霸はどうなんです?」

「僕行ケへんてさっきも言ウたやん」

「わたしも、現状無責任に人助けができるほど身軽な身ではないんですよね。いま若サマは大事な時ですし、わたし経由で若サマに逆恨みされては困ります。わたし個人を恨んでくれるなら問題はないんですが」