うそつきな唇に、キス




言うなら、たぶん、今しかない、と思った。



「……いってきます、若サマ」



いつぞや言いそびれた言葉とともに、そのきれいな手に両手で触れた、のだけれど。

やっぱり、手は強く、それはもう服が皺になるくらい、握られたままで。


仕方ない、と。袖から腕を引き抜いた、瞬間。



「は?!?!?!ちょっ、えるおま、何しようとしてんだ?!?!」



琴にまで、服を掴まれた。それも、若サマみたいにものすごい力で。



「え?どうしても離してくれなさそうなので、服を脱ごうかと」

「このバカ!!!!お前には倫理観がないのか?!」

「あ、それはたぶんないです。というか、若サマや琴、それに睿霸といて完全消滅した模様です」

「ガッデム!!!」



そう琴が頭を抱えて叫んだかと思うと、なぜか脱げないように袖をぐるぐる巻きにされてしまった。



「服持って来るからちゃんと待ってろよ、脱がずに!!っつかここにいま男しかいないことを考えろ?!?!」

「え?……あ、はい、そうですね」

「ほんっっとマジバグってんなお前の貞操と倫理観!!」

「す、すみませんでした?」



琴が吐き捨てるような一声とともに、バタバタと慌てた様子で姿を消した直後。



「……やっべー女」

「……やばいひとだ」

「ナはははははは……!!やっぱえるちゃんオもろいなあ!!!」

「あの睿霸でも笑うのやめないとちょっと手が出ちゃうかもです」



なぜか、若サマと琴が知らぬうちに、その場が修羅場へ変貌しかけていた。