うそつきな唇に、キス




わたしの後ろから、がばりと抱きつくようにして登場した睿霸に、もう琴は何が何だか訳がわからない顔をしていた。



「あ、えと、その、わたし、睿霸と最初に会った時、世間話の一貫として、睿霸がよく毒殺されかけたから、毒に詳しい人を連れてきてる、って聞いたので、す、すみません、」



身内事情が、それも毒殺されかけている、なんて事実が、こっちの世界では醜聞にも等しいことだということは、よくわかっている。ここは、そういう無慈悲で冷酷な世界だから。

……だけど、隈が見える琴は、ほんのいっときも休んでいないことなんて、誰が見ても丸わかりで。


……なんて、そんなのは都合のいい言い訳にしかならない。

ただ、怒られることがわかっていたから、事情を説明しながら、なぜか謝ってしまった。謝罪なんて、後回しでいいはずなのに。


わたわたしながら、それでも事情説明を試みようとしていた、のだけど。


はあ、と。今まで聞いたことないような、特大のため息が聞こえて、びくりと肩を震わせた、直後。



「……あー、悪い。徹夜で頭まわってなかった。……説教はあとでするとして、まあひとまず、おかえり」

「……え、」