キーを差し込みボタンを押すと、エンジンがかかった。
「……これで、わたしも本格的な無免許運転かあ」
いやでも、若サマあたりが免許証を用意してくれてたりするかもしれない。……うん、そう思っておこう。
なんて自己完結をして、スタンドを上げたあと、ヘルメットを被った。
えっとそれから、ペダルを押し上げて、アクセルを捻ったあとに、レバーを離していけば────、と。
操作手順を確認しながら、発進しようとした、まさにその瞬間。
「える?!?!」
バァン!!と、ドアを破る勢いで入ってきた琴の髪は、軽く湿っていた。かなり急いでここにやって来たんだろう。
「あ、琴。来ちゃいましたか」
「あ、って、いや来ちゃいましたかって、」
「琴」
ひどく困惑した様子の琴に向かって、言うまでもないとわかっていたけれど、言わずにはいられなかった。
「少し、出かけて来ます。わたしが帰るまで、若サマのことよろしくお願いしますね」
「はっ?!ちょ、える、詳しい話を────、」
と。琴が言い終わるその前に。
まるで夜の町へと誘われるようにレバーを離して、真っ暗な闇の中に突き進んだ。



