うそつきな唇に、キス




ちゃんと確認したことはなかったけれど、カメラあたりは、たぶんある。今まで、誰かに見られていないはずなのに、ある種の視線を感じたことが幾度かあったから。あとはまあ、不確定だけれど、発信機、盗聴器あたりもついてる可能性あり、かな。

さすがにプライバシーを守ってくれるつもりはあったのか、お手洗いや脱衣所にはなかったけど。


その手の類のものは、この家に、たくさんある。わたしが来た日から、ずっと。


……自由は、制限された範囲でしか享受できない。

そもそも、自由を与えられたからと言って、特にすることはないから別にこれでよかった、のだけれど。


いま、この瞬間だけ、その制限がひどく煩わしくてならない。


けれど、さっき言ったように突破はできる。

できるの、だ、けど。



「……どうして、ふるえてるんだろう」



あの日でさえ震えなかったドアノブにかけた手が、いまはなぜか、小刻みに揺れていた。


なんで、震えるの。

別に、怖くなんてない。わたしに恐怖を感じさせるものなんて、今までだってなかった。

だから、震える原因になるものなんて、ひとつとしてないはずなのに。