ふと、ひとつのドアの前で、苦笑をもらした。
さっきまでいた、若サマの部屋の前じゃない。
わたしや琴、若サマの私室、それにその他用途不明の部屋が並ぶ2階と違い、共同スペースが配置された一階にある、ひとつのドアの前に、わたしはいた。
……おそらく、位置的に、ガレージへと繋がるドアの前に。
もちろん、鍵はかかっているけれど、突破は可能。
祐庵会の時に披露したピッキングの出番。ちなみに、その時に使用したクリップの針金は、琴に用意してもらった祐庵会の資料に留められていた物を使っている。今回も、同様のもの。
はやく、はやく、はやく、しないと。
頭では、わかってる、のに。
「……なんで、」
琴がシャワーを浴びている今がチャンスだってこともわかってる。鍵を無理矢理に開けたら、たぶん琴や若サマの方に何かしらの連絡が行ってしまうことも。
そういう仕掛けが、この家の中には山ほどあった。



