うそつきな唇に、キス




そう言って、本当に一階へと姿を消した琴の言葉は、すこし、いつもと違った気がする。

声音が、温度が、口調が。


……ふたりは、いつ何時も、大丈夫という三文字は絶対に口にしない。大丈夫は、きっと、油断の証でもあるから、なんだと思う。


それに、あんなことを言ってはいたけど、琴はたぶん、打開策を講じるために走り回るんだろう、これから。


……なら、わたし、は。

わた、し、は、琴が言っていた、ように、────。


ぴろん。

強制終了させようとした思考は、ひとつの電子音により、唐突に遮られた。


スマホが、何かの連絡を届けた音により。


……睿霸から、かな。

そう思って、ポケットから出して画面を見た、瞬間。



────反射的に、スマホを床に叩きつけそうになったのを、寸でのところで堪えた。


瞬間沸騰しかけた熱は、指に触れるかすかな冷たさで冷却されていき、その冷えが、頭を冴えわたらせた。



「……ああ、なるほど。そういうこと」



あまりにもタイミングが良すぎることとかの謎はあるし、少々不服な文面に違いないけれど、でも、これのおかげで、打開策が見えてきた。


……けれど、それには。



「……約束、破っちゃうなあ」