うそつきな唇に、キス




……あの人、出席日数とか足りてるのかなあ。

いや、特殊な身の上だから、学校も配慮はしてくれてる……?


などなど。時計の短針が10を過ぎ去ったのを見つめて、お風呂にでも入ろうとリビングを出た時。



「……あ、」



がちゃ、と。軽い音をたてて、玄関のドア開いた。



「お、える。食器洗いはしてくれたか?」

「はい。いま終わらせました」

「今度は割ってないだろうな?」

「ちゃんと力加減考えましたよ」



そこから顔をのぞかせたのは、琴と、少しだけ疲れような色を宿している、若サマだった。



「若サマ、少しお疲れですか?」

「……ああ、すこし、な」

「える、ちゃんと飯は残さず食ったか?」

「食べました」

「お前、この前海行った時も思ったけど、会ってから全然太らねえからな。ちゃんと食ってんのか心配になる」



そう言って、今日も色濃く血の匂いを漂わせている琴は、黒の背広を乱雑に脱いで、肩にかけたまま浴室へ、行こうとした。


────けれど、その日は。



「……若サマ?どうしたんですか?」

「……?若?」



異変が、起きた。