「じゃあジゃあ、こん中やったらいっちゃん誰が好き?!」
前のめりになって、興奮気味に聞く男に、えええ、と答えるのを若干躊躇いながらも、ひとつため息をついて、彼女は言った。
まるで、そうなることが当たり前のように。
「そんなの────若サマに決まってるじゃないですか」
その回答に、ええええという否やとともに、まあだろうな、という同意の言葉も返されていた、そんな中。
「……若サマ?どうかしました?」
「……いや、」
ふと左耳に触れた男は、なぜかその時、耳たぶに空けたピアスがひどく冷たく思えてならなかった。
「……お前の嫌いなタイプの人間というのが、少し気になっていただけだ」
「え、今度は嫌いなタイプですか……。んんっと、そうですねえ、強いて言うなら、ですけど」
嘘のようで、本当の言葉は、この場にどれほどあったのか。
「────命乞いをしてくる人、でしょうか」
「待ってなんかいきなリ物騒になったんやけど」
「えるもこっち側に着々と染まってきてるんだな……」
「あのそんなにわたしの嫌いなタイプに文句があるなら御三方はどうなんですか?」
そんなもの、当の本人でさえ、知ることはなかった。



