うそつきな唇に、キス




「いやー、やけどさア。若くん、えるちゃんのこと一回も可愛ええなあ、って思ったこトないん?可愛ええやなクても、別嬪さんとかさあ」

「………、」

「ああ、僕に答エるつもりはないんやね、知っとる知っとる。やけド、えるちゃんは気になるんやないと?なあ、えルちゃん」

「え、いえ、別に……、」

「……はあ、」



これは答えないとずうっと追求されることを悟ったのか、若サマは短くため息をついて、自分のブレザーに掴まるわたしを静かに見下ろした。

そして、見下ろされているわたしはというと、若サマなら下手なことは言わないと、若干安心していた。

……の、だけど。



「………、二番目に、綺麗だと思うが」

「……………、え」



予想外もいいところの言葉を落とされて、目を見開き硬直。自分の耳さえ疑ってしまった。



「……あ、あの、若、サマ?何言って……」

「何って、」

「わたし、そんなに綺麗、ではないと思うんですけど、」

「……いや、綺麗だろう、お前は」



至極当然のことのように、真顔で、デフォルトの無表情で、わたしをジッと見下ろしながらそう言った、若サマに。


もう、なにが最適解かなんて、咄嗟には導き出せなくて。



「う、あ、お、おて、」

「……お手?」

「……お、お手洗いに行ってきます!!!!」




その場から、勢いよく離脱した。