うそつきな唇に、キス




「えるちゃんドないな反射神経しとるん?!あの側近くんからスマホ奪イ取るとか!えるちゃんやっパ巷で有名な殺し屋やろ!?」

「誰ですかそれ!」

「数年前に表舞台から姿を消シた有名な殺し屋や!」

「知りませんよほんとに誰ですか!!」



教室の中を、ばたばた逃げ回るわたしと、追いかける琴に便乗している睿霸を、ひどく不思議そうに見ているクラスメイト。

そして、そんなわたし達を呆れたように腕を組んで見守っている若サマ。


見てるだけじゃなく、琴と睿霸を止めてほしいんですが!


そんな願いが通じたのか、若サマははあ、と軽くため息をついて、組んでいた腕を解いた。



「……える、こちらに来い」

「は、はい!」

「ちょ、若、消すなよ!!えるの気が緩んでる一瞬を撮ったんだから!!それ以外の時は何がなんでも、える撮らせてくれねえし!」

「えるちゃン僕にだけでも見せてや〜!!」



はやく、早く消してください!!と言いながら若サマに突進する勢いでスマホを渡すと、受け取った若サマは、数秒その写真を見つめて、なぜか驚いたようにほんの少し目を見開いた。けれど、すぐにぱ、ぱ、と何回か画面を操作したのち。



「……これでいいだろう、える」

「……わ、ありがとうございます!」



返されたスマホのフォルダには、わたしの写真はすっかりと消え去っていた。