うそつきな唇に、キス




くわっと、琴が拘束するのもそっちのけで聞いて来るから、かわりにパパパッと急いで手足を縛り付ける。



「え、あの、若サマに勝手に使って大丈夫ですかねって聞いたら、別にいいだろって言ってたんですけど……」

「若了承済みかよ!!!」



だったら俺にも伝達しろ……、と項垂れる琴に、また変な気苦労をかけてしまったらしい。

いつか心配のしすぎでぶっ倒れそう。



「はあ、まあわかった。じゃあ、その包丁どうした?」

「……え、素潜りに使ったの、料理するのに使います……?」

「使いたくはねえけど、所在ははっきりさせときたくて」

「ゴミ箱にポイしました」

「だ!か!ら!それは俺に伝えろ!!!!報連相は常識だろーが!!!!」

「ふ、ふみまへん。……そっ、そういえば、さっき若サマにわたしは怪物じゃなくて化け物だって言われたんですけど、そのふたつに明確な違いってあるんですか?」



このままではわたしに不利な状況が続くと思い、急いで話題をそらすために選んだものは、つい先程、若サマに言われて首を捻った言葉。

そして、そんなわたしのとってつけた疑問に、琴はなぜか首を傾げて。



「ん?もしかして、教えてなかったか?」



そのふたつはな─────、


そう続けて落とされた言葉に、思わず、目を瞬かせた。