うそつきな唇に、キス





え?と聞き返す前に、どさりと砂浜に昨日ぶりの嫌な音が響いた。



見れば、そこに────若サマが肩にかけていた、ホルスターが落ちていて。



「え、ちょっ、若サマ?!」

「お前が身を挺してでも守ってくれるのだろう?」

「まあ、はい……」



そうは言ったけど。でも、こんなにあっさり自衛のための武器を手放すなんて。

それに、わたし相手に銃を預けることも、若干腑に落ちなくはないけど。


なんて思いながら、砂がついたホルスターを取り上げて、若サマの方を振り返ると。



「……なんというか、入水じさ、」



という、途轍もない不吉なことを自然と言いかけて、寸前で口をつぐんだ。


……や、だってあの人、ざぶざぶ無造作に海の中に進んで行ってるから。このままほんとに海の中に歩いていきそうで、すこしこわい。



「……はあ」



……………、あの言葉、聞こえてないわけ、ないんだよなあ。

これでも、五感は人より優れている自覚があるから。


ふと、視線を落としてホルスターにおさまっている拳銃を見たのち、そのまま若サマに背を向ける。



「琴ー、すこし頼みごとがあるんですけど、」