うそつきな唇に、キス





その場で腰を抜かした一般人の男性は、琴に鼻で笑われていた。まあすぐに琴に引きずられてしまったから、その人を見ることは叶わなかったけど。

たぶん、震えてるんだろうなあ、とかなり他人事に思った。



「……琴って、そんな目と声出せたんですね。普段はわたしと若サマの保護者?高校生コスプレ?してたので、てっきりそういうの向いてないのかと思ってました」

「折角の休みの日にそれを持ち出すのはやめてくれ……俺もう若くねえんだから……」

「何言ってるんですか、じゅうぶん若いですよね?」

「お前らの方が圧倒的に若いだろ。……高2でハタチって、それなりにきついんだぞ……」



はあ、と今度は嘆くようなため息をついた琴に、はははは、と乾いた笑い声を返すしかなかった。



「それより、若サマを置いて来てよかったんですか?曲がりなりにも護衛なのに」

「いーんだよ。敵意や殺意はいまのところ感じないし。何かあれば若自身が対処するだろ。何より、あいつが言ったからな。えるを見てこいって」

「……あ、そうだったんですね」



この時、普通の子だったら、心配してくれたのかな、とか、思ったりするのだろうか。


……そんな考えが、ふと脳裏をよぎった。