うそつきな唇に、キス




そう言って、わたしの振りあげた手を掴んだ人物は。



「……あ、琴」

「あ、じゃねえよ、〝あ〟じゃ!!やけに遅いと思ったら、何絡んでんだよ!」

「わたしが絡んでるわけじゃないんです。絡まれたんです」

「絡まれた側の態度じゃなかったぞ?!今のは!!」



お小言ばかりの成人済み苦労人、略して琴だった。



「なんでわたしが怒られてるんですか……?」

「一般人にこんな場所で喧嘩売ってるからだろうが!もしやるなら人気のない場所で、それも足がある時にしろ!あと俺の休暇中には問題起こすな!処理するのは俺なんだから!」

「あ、やるのはオッケーなんですね」

「時と場合だがまあ堪忍袋の緒が切れそうな時はやれ。俺が全力で隠蔽してやる。たぶん若もゴーサイン出すだろ」



小声でこそこそ話し合っていたら、急に琴が抑揚のない声でそう言って、ちょっと笑いそうになってしまった。