うそつきな唇に、キス





本で読んだことしかなかったけど、意外にリアルでもあるものなんだなあ。

……でもまあとりあえず、若サマを待たせるわけにはいかないから、早めに退散させてもらおう。



「すみません、連れがいますので誘うなら他のお暇な方をどうぞ。では」



最低限のことだけを言って、その場を離脱しようとしたの、だけど。



「ちょ、ちょーっと待って!じゃあ連絡先だけでも!ねっ?なんならその連れの人も一緒でいいから!」

「最後のだけはちょっとあの絶対無理ですごめんなさい」

「へっ?」



わたしの反射的な爆速の却下に、声をかけてきた人はぽかんとしてる。


でも、あの人たちと一緒に一般人が食事するなんてどんな地獄絵図になるか。想像もしたくないから。


……この手の人、たぶん連絡先渡してもしつこいと思うし、なあ。なんなら無理矢理ずるずる引き摺られていく、という強行策もあり得るくらいには強引そうだし。

だとしたら、ここはもう物理で解決するのが得策か……。


そう思い立って、メリケンサック(リング)の威力をためそうとおもむろに手を振り上げた時だった。



「────おい、何しようとしてんだ!?」