うそつきな唇に、キス





「……えるは、第二の性ハーフに興味でもあるのか?」



若サマの探るような、はたまたただの疑問のような色を宿す瞳に、慌てたように笑みを取り繕った。



「あ、そういうわけではないんです。ただ、いま一瞬よぎったものが気になったたけで」

「よぎったもの……?」

「その、なんでスマホの画面にそういうのが書いてあるんだろうな、と思っただけなんです」



そう正直に答えると、若サマはしばし沈黙したのち。



「……お前、まさかネットニュースを知らないのか?」

「え?ねっと、にゅーす?ですか?」

「……………、」

「………………、」



この場に、なんとも言えない沈黙が降りたタイミングで、快活な声と姿が気まずい空気を吹き飛ばした。



「える!お前の水着、買って来たぞ」

「わ、ありがとうございます」

「ちなみにそれが琴吹のこの、」

「だから好みじゃねえつってんだろ!!」



漫才みたいなかけ合いに、笑いながら琴からブツを受け取ろうとした時、ふと左手の親指に視線がいった。



「……琴がリングつけてるの、初めて見ました」

「ああ、まあ一応休暇だし。普段は失くしそうでつけてないだけだよ」



左手の親指。そこに、唐草模様の太いシルバーリングがはめてあった。それも、メビウスの輪をかたどったものが。