うそつきな唇に、キス






─────がちゃ、とドアを開ける音は、これでもう何度目になるだろう。



「……この渡貫の部屋で最後となります」

「ありがとうございます。並びに、長時間拘束してしまって申し訳ありません」

「い、いえいえ!上の方の憂いごとは、傘下たち皆の憂いごとでもありますので。お気になさらないでください」



こちらが下手にでるような言葉を出しても、相模さんに驕りはない。

若サマ、結構いい傘下を……、………や、もしかしたら、違うのかもしれない、けど。


それでも、裏社会の中では最も善性に近いひとのように思う。


……なんて。渡貫さんの部屋を見回しながら、背後の会話に耳を傾けている、と。


こん、こん。

二度のノック音が、部屋に響き渡ったその直後。言葉を返すその前に、がちゃりと扉が開き。


「長〜、渡貫さ〜ん、前の一件の報告書があがっ────、」

「このバカ!!!!!!」

「っだ!!!!!!!」



顔を出した青年の明るい頭を、ばしりと相模さんが引っ叩いた。