うそつきな唇に、キス




スッと扉を開けて入ってきたのは、これまた若い男の人だった。会長さんより、すこし若い。



「える様、こちらは─────、」

「副長の渡貫(わたぬき)さん、ですよね。本日は急な訪問にも関わらず、対応していただきありがとうございます」



お茶をテーブルに置いたタイミングでそう言えば、屈んでいた渡貫さんはびっくりしたように顔を上げた。同時に、目の前にいた相模さんも同じような顔をして。



「い、いえ……。というか、なぜ、僕の名前を、」

「こちらに出向くにあたり、訪問先の最低限の情報は知っておかないと失礼ですから」



客観的に見たらひどく気味悪く思われているんだろうな、ということは自分でもわかっていた。事実、ふたりの笑顔は若干引き攣っていたから。

そうわかっていてなお、わたしは鉄壁の笑顔を保ち続ける。



「そ、そう、ですか」

「はい。……では、こちらが本題となるのですが、少々ここにいる方たちのお部屋を見せてもらえることはできますか?」