うそつきな唇に、キス




その後。客間と思しき部屋まで通されて、現状についての資料と口頭での報告をされた。

もちろん、一語一句違わず若サマに伝えるために全て暗記済みである。



「……なるほど。現状の問題点については理解しました。これについては、」



自然と口から改善方法が飛び出そうになって、ふと口を閉じる。


これ、わたしが口を出してもいいことなんだろうか。若サマからは、きなくさい動きをしている人物を特定し、出来れば捕縛、という命を受けてはいるけれど、定期報告に関しては何も指示されていない。

……言われてないことは、わたしが口を出すことじゃない、よね。



「……これについては、若頭に報告ののち、後日改善方法を提示させていただきます」

「は、はい、ありがとうございます」



ぺこり、と頭を下げた彼に構わず、だんだんと近づいてくる足音に意識を集中した。



「お話中失礼します。お茶をお持ちいたしました」