きみのチョコに毒混ぜた




「千紗、小林くんにバレンタインねだられてるんだって?」



お昼休み。友達と購買に向かいながら、にやにやと聞かれる。


「え、なんで知ってるの?」

「えー、なんか噂になってたよ。多分わりと皆知ってる」



誰かに聞かれてたのか、それとも本人が言ってるのか。それって、きみも知ってるんだろうか。




「ねえ洸〜、バレンタイン何食べたい?」


と、別のこと考えてる時でも自然と耳に飛び込んでくる名前が聞こえて、目を向ける。



あいつと、可愛い女の子が手を組んで購買のパンを見てる。洸は大好きなチョコチップメロンパンを手に取って、んー、って少し考えたような顔する。




「なんでもいーよ、真奈がくれるなら」



昨日電話してた人とは別の人らしい。べたべたくっついてる手を見て、優しく笑うきみの横顔を見て。ぎゅ、と心臓が痛くなる。


私にはそんな顔、してくれないくせに。


このままきみの腕を掴んで、ここから逃げて、ふたりだけの世界に行けたらいいのに。


……なんて、実際は手を掴む勇気すらないくせに。