豪壮な玄関を使うのは、そうとう勇気がいる。

 玄関は、それほどドドンと威圧感がある。

 どこの屋敷もそうであるように、この屋敷も裏口を開けると厨房になっている。

 今日はボスに夕食をごちそうになったから、帰宅が遅くなってしまった。

 だから、もうだれもいないと思っていたが、厨房にはまだ灯りが灯っている。

 窓の向こうは、煌々としている。

 まだ料理人たちがいるのね。明日の仕込みをしているのかしら。

 そんなことを思いながら、裏口の扉のノブを握った。

 その瞬間、いつもと違う気がした。そう感じたときには、ノブから手をはなしていた。同時に、右足をうしろへ下げていた。