「キャッ」

 予期せぬ動きに、座席から放り出されてしまった。

 が、さすがはブレントン。太くて長い腕をわたしの腰にまわしてくれ、抱き止めてくれた。

「何者だっ!」

 馭者台からロバートの緊張した怒鳴り声がきこえてきた。

 ブレントンの胸元から窓外を見ると、ちょうど左右が街灯のない薄暗い林の道にさしかかったところのようである。

「『銀仮面の騎士』に話がある」

 そのとき、押し殺した声がきこえてきた。

 どこかできいたことのある声。

 イーサンは、ブレントンにうなずいてから出て行った。ジリアンは、ブレントンとわたしを守るように身をよせてきた。

 その右手が、ドレスの裾に触れている。