「わが甥ながら、立派すぎて鼻が高いよ」

 彼らの背を見送りつつつぶやいたのはボスである。

 彼は、心底可笑しそうである。

「予想以上に閣下が強気でしたので、腹に据えかねているという表情でしたね」
「兄の言う通りです。ポーカーフェイスを保っていましたが、心の内は側にいる者を殴り飛ばしてもおかしくないほど荒れている感じです」

 ジェフとネイサンもまた、ニヤニヤ笑いが止まらない。

「昔、彼の前で口を開くことはなかったからな。それこそ、うなずくか一言二言発する程度だった。それがあれだけ口をきいてやったのだ。感謝こそされ恨まれる筋合いはない」

 ブレントンもまた笑っている。

 宰相は、ほんとうに驚いていた。

 ブレントンの不愛想、不躾というイーサンが流した噂を信じている上に昔の彼のそういった演技にだまされているのなら、先程の彼の態度に度肝を抜かれたかもしれない。

 心の中は穏やかではなかったはずよね。

「おっと陛下と妃殿下のご登場だ」

 ボスの言葉が終らない内に、国王陛下、王妃殿下がいらっしゃったという先触れが発せられた。