でも、ぜったい、これだけは。
今の顔だけは、私だけが知っていたい顔。
「ゆいたくん…、」
「ん?」
「…声…、出ちゃう…」
とろけそうな目で訴えかけると、同じくらいか、それ以上の眼差しが見つめ返してくる。
「じゃあ2択ね。キスで塞ぐのと、声も出せねえくらい激しーの。…どっちがいい?」
「……りょう…ほう…」
「……超欲張りじゃん」
とけて、溶けて。
もっと、とろければいい。
「っは、……かわい」
全身がビリビリと痺れるくらい強めに吸われて、熱すぎる感触がなぞって、ちゅっと音を立てる。
「だからもう、俺にちょうだいって。…このみちゃんのいちばん甘いとこ」
このチョコだけは私しかあげることができなくて、私しか貰うことができないんだと教えられた───とあるバレンタインのこと。
後日談:この日の放課後、無事に生チョコを渡すこともできました。