小一時間ほどで、半日かかっても解けなかった問題が全部綺麗に!
神様、仏様、翔様だわ。

「翔、ありがと」

ローテーブルから自分の机に移動し、他に分からない所がないかチェックしていると。

「ッ?!………何?」

突然、背後から抱き締められた。
不意打ちのような予想もしてなかった翔の行動に戸惑ってしまう。
だって、抱き締められたのなんて、初めてだから……。

「行くの、やめようかな」
「えっ?!」
「今日一日、ずっと考えてた」
「それで怪我したの?」
「……ん」

家族のような、姉弟のような関係が十年以上続いて来たから、突然生活が変わるのは誰だって不安だ。
私が彼のいない生活に不安を感じるように、彼も戸惑っているみたい。

「夢を諦められるの?」
「無理」
「なら、答えは見えてるじゃん」
「……ん」
「背中を押して欲しいの?」
「……かも」
「しょうがないなぁ」

翔は自分にストイックすぎる反面、意外と脆い部分もある。
だから、一見大人びて見えるけれど、本当の翔は結構ナイーブな性格なんだよね。
親元を離れて、一人でやっていけるのかな?
周りのサポートもあるだろうけど、言葉の壁もあるだろうし。
瞳の奥が揺らいでる気がして、そんな彼を抱き締めたくなる。

椅子から立ち上がり、彼を背後からぎゅっと抱き締める。
こういう行為も、暫くはお預けになるだろうから。

「限界までチャレンジしてきな!辛い時は弱音吐いたっていいんだよっ、いつでも聞いてあげるから。どんな翔でも、私が味方でいてあげる」

私はいつだって彼が前に進めるように背中から応援している。
今までも、これからも……。