毎日朝から晩まで練習に明け暮れているのに、いつ勉強する時間があるのか謎だけど、彼の成績は常にトップクラス。
普通科に通う私より全然頭が良いのが納得いかない。
彼はいつだってコツコツと努力をし続けるタイプ。
何もせずに優勝してるわけではなくて、陰でこうしてずっとたゆまぬ努力を積み重ねている。
持って生まれた運動神経の良さに努力がプラスされているのだから、自ずと結果もついて来る。

「次に帰って来るのは、いつくらい?」
「わかんねぇ。けど、年末年始は家で過ごしたいから頼むつもり」

国内で試合があると言っても、長くて数日。
合宿で山に籠る時でも長くて二週間。
今まで数ヶ月も離れたことが一度も無かった私は、既に寂しさを味わい始めていた。

「凛ママが心配するから、そろそろ帰るか」
「うん、……アイス買ってあげる」
「マジで?やったぁ〜」

子供みたいにはしゃぐ彼を見れるのも、残り数日。
今は少しでも彼との想い出を作っておこう。
世界に飛び立ったら、きっと私のことなんて忘れてしまうだろうから……。

翔は何も言わなくても自宅へと送り届けてくれる。
当たり前だと思っていたこの行動も、本当は特別なんだと漸く実感し始めていた。
コンビニで購入したアイスを食べながら、肩を並べて歩く。

「あっ、……当たったかも」
「マジかッ?!」
「ほら、何か書いてあるっぽい」

当り付きの棒アイス。
昔からこの味とこのドキドキ感が好きで、ついつい買ってしまう。
アイスからほんの少し顔を出した棒の先に『野球の球』の図柄と『三』の文字が見える。
その図柄を翔に見せると、パクっと一口アイスを奪われた。

「あぁ~っ!食べたなぁ~!」