だから俺は口調を変えたし、家事も全て完璧にこなせるように必死に努力した。
朱音に母を失った悲しさを抱えてほしくなかったから、浅知恵とは分かっていたけど実行した。
いや、それはただの建前か。
俺が愛する薫の感触を忘れたくないと願ったわがままだったのかもしれない。
急に変わった俺に対して、朱音は戸惑うそぶりすら見せずに何も言わなかった。
その朱音に俺は甘えてしまっただけなんだろうな。
もうすぐ高校を卒業するくらいの年齢になっているのに、未だあの頃の泣き虫だった朱音を思い出してしまう。
いつの間にこんなに大きく育ったのか、時の流れはあっという間。
「なぁ、薫。天国から見てるか?」
誰もいないはずなのに、声に出てしまうのは届いてほしいと願っているからなのか。



