「ただいまー」
「おかえりなさい、朱音」
家に帰ると、エプロン姿のお父さんが出迎えてくれた。
相変わらず可愛らしい柄のエプロンに笑ってしまいそうになるけど、どうしてか似合っているんだよね。
リビングに入ると夕飯の支度をしてくれていたところ、みたい。
「ごめんね。まだ夕飯出来てないのよ」
「全然いいよ。部屋にいるから、出来たら呼んでね」
「分かったわ。あと30分もあればできると思うから」
カバンを持って自分の部屋へ行く前に、部屋の隅にある仏壇へ向かう。
そして手を合わせて目を閉じる。
”お母さん、ただいま”
心の中でそう告げて、妃沙が引退したことも伝えた。
お母さんは妃沙と直接会ったことはないけど、私が高校で出会った大事な友達だからこうやって報告してる。
きっと天国にいるお母さんに届いていると信じて。



