「さすがに、ずっと部屋に引きこもっていては怪しまれる。今日はスキーをしに行こう」

翌日、シャワーを浴びた桜士がそう言うと、十がすぐに「俺、スキー初心者なんですけど」と手を挙げる。だが、これはもう決定事項だ。

「安心しろ、教えてやる」

「ええ〜……。うまくできますかね……」

不安そうにしている十を、桜士が面白いなと思いながら見ていると、公安からスマホににメールが届いた。何か進展があったようだ。

「雨宮!」

スマホの画面を桜士は十に見せる。そこには、「つい先ほど、このようなイラストが描かれた紙が送られてきました」という文の下に、絵の写真が添付されている。

「な、何でしょうこれ……」

届いたメールを見て、十は眉を顰めながら首を傾げた。

真っ白な髪には、注射器の絵が右側に描かれていた。そして左側には何人もの女性が血まみれで倒れている絵が描かれており、二つの絵の下には、「不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」と書かれている。

「この下に書かれてる言葉ってあの小説に出てきますよね……。えっと、何だっけ……?」