「……で、結局のところ誰が元宮に薬盛ったんだよ。あれ、魔力薬だろ。」

 パタン、とAnarchy室の扉が閉じた頃。

 さっきの神々程ではないけど、結構低い小鳥遊の声が響き渡る。

 薬、とはあの猫化の事だろう。

 察しの良い小鳥遊は気付いてる、魔力薬が使われてるって。

 まぁ、僕だって気付いてたけど。

 ……というか多分、盛ったの僕なんだよね。

『わっ、ありがとうございます! 天さんっ。』

 満面の笑みで紅茶を受け取ってくれた神菜へ、遅すぎる謝罪をする。

 花火が打ち上げられ始めた時、僕は紅茶を淹れに給湯室にいた。

 神菜が以前好きだと言っていたアールグレイを丁寧に淹れ、最大限に美味しさを引き出す。

 ……その際に、神菜だけにもっと美味しくなるエッセンスを入れた。

 僕はよかれと思って入れたけど、それがまさか猫化してしまうものだったとは。

 とりあえずその魔力薬を確認しようと、こっそり給湯室に戻ろうと踵を返す。

「あ、これじゃないかな。」

 ……ギクッと、漫画さながらの音が鳴った気がする。