【side風羽】

『……わくん、ふわくんっ!』

『どーしたの?』

『見て! 白いスミレ……! わたしね、ふわくんのために見つけたの!』

『……そっか、ありがとうっ!』

 見慣れた薄桃と白色の髪、紫がかった大きな瞳。

 透き通るようなその声に、金髪の幼児は笑顔を向ける。

 ……そして、名前を呼ぶんだ。

『かんなっ!』

「……っ!」

 今一瞬、息ができなかった。

 いや……どちらかというと、息をしようとしなかった。する暇がなかった。

 さっきのは、夢……?

 にしても、やけにリアルだったな。あんな事、体験した事なかったはずなのに。

 夏休みのある日。少し遅い時間に起きた僕は、とりあえず水分を取ろうと体を起こした。

「……い、った。」

 途端、ズキン――と、頭に痛みが走る。

 何これ、頭痛? でも、こんなにしんどいっけ……。

 心なしか呼吸がしづらくて、肩で大きく呼吸をしていく。

 深呼吸のように意識してみても、喉を痛めるだけで何の休息にもならなかった。