「そうか。……してやろうか、小説と同じ事。」

「へっ……?」

 不意にそんな事を言われ、素っ頓狂な声を零してしまう。

 思わず新さんと視線を合わせると、どこか悪戯っ子のように微笑んでいるのが分かった。

「ドキドキする事、好きなんだろ。」

「あ、う……そ、外はダメ、ですっ……。」

 耳元で囁くように言われてしまい、かぁぁっと顔が熱くなる感覚を覚えながら言い放つ。

 み、耳弱いのにっ……しかも、ここ外っ……。

 公共の場で甘い事をされるのは恥ずかしくて、視線を外しながら顔の火照りを抑えようとする。

 そうしていると、おもむろに新さんの声が飛んできて。

「……だったら、帰ったらめいっぱい甘やかしてやる。」

「……っ!?」

 自分で墓穴を掘ってしまった事に、やっと気付いた。



 その後はカフェに行ったり、気になっていた家具を見に行ったり。

 新さんと居られる貴重な時間を大切にしながら、私はこれでもかと楽しんでいた。

 ……そして、そろそろ帰ろうかといった時間帯になった頃。

「あの……少し、スーパーに寄っていってもいいですか? 確か、冷蔵庫の食材が減っていたはずなので、ちょっと買い足しに行きたくて……」