おっと! 結婚式の思い出に浸っている場合じゃない。今はとても忙しい。まずするのはハンカチの刺繍だ。流行の移り変わりは早く、今では家紋の刺繍も5色になって難しくなってきた。レイラは結婚によって家紋が変わったから、俺の家の家紋にしなくちゃいけない。
ウキウキとハンカチに刺繍していると、ふとシャルロット嬢を思い出した。
あの令嬢も夜会の場でまわりに糾弾され、社交界では誰も相手にしない。それどころかシャルロット嬢の男爵家は社交界の風紀を乱したということで、爵位は弟に渡ることになった。
もともとあの家は父親の遊びの借金で困窮していたらしいから、この機会に堅実と噂の弟に譲るよう言われたのだろう。平民として暮らすことになるが、したたかな彼女のことだ。なんとかやっていくだろう。



