今にも零れそうな涙を目に溜め、こちらを見上げている。俺があまりの不気味さに呆然としていると、彼女はそっと俺の背中に手を置き、もう片方の手である場所を指差した。
「詳しいことはあちらで話しませんか? ここは人がいっぱいいるから、聞こえちゃいますよ」
彼女が指差した方を見ると、小さな灯りしかない庭園のベンチがあった。秘密の話をするにはうってつけの場所だが、たいがいは恋人や愛人と使う場所。そんな場所に、なぜ俺を誘う? いくらレイラに関する話とはいえ、淑女としてはしたないだろう。
「私ならレイラ様と違って、グレッグ様の趣味もわかってあげられます。小説や観劇も一緒に楽しめますし、女主人として社交も完璧ですわ」
(一度はレイラ詐欺に引っかかったが、二度はない! )
カッと頭に血が上り、気づけば大きな声で叫んでいた。



