『おい、こっちだ』


 頭上からくぐもった声が聞こえてきた。


(えっ! まさか!)


 信じられない思いで上を見上げると、そこにはとんでもない大きさの黒竜が浮かんでいた。大きいなんてもんじゃない。十メートルはあるだろうか。しかも私は勘違いをしていたようだ。空が曇ったんじゃない。空いっぱいに広がった翼が影を作っていたせいで、暗かったのだ。


 黒竜の後ろにある空は綺麗な青空で、体が太陽の陽光でキラキラと輝いている。鱗の一つ一つが虹のように艶めき、現実の光景とはとても思えなかった。


『どうだ? カッコ良いだろう』