私が涙目で勢いよく頭を下げると、竜王はククッと喉を鳴らすように笑った。
「俺は別にかまわん。今は平和で問題も起こってないからな。作物も豊かで食事も美味い。はやり病もないし、周辺国とも関係は良好だ。おまえの話を聞くだけでも楽しそうだし、気楽に過ごせばいいんじゃないか?」
「そ、そうは言いましても……」
なんだか竜王は最初から私の能力に期待していなかったようだ。もちろんそれは助かるけど、他の人が許してくれるわけがない。何も国に貢献していないのに、王宮でドレスを着て優雅に過ごしてたら、明日にでも私はあの女性達に処分されそうだ。
(やっぱり働かなくちゃね! ……いや、待って! その前に聞くことがあったじゃない!)
私はあわてて竜王に向かって質問を投げかけた。
「あの! 私は元の世界に帰れないのでしょうか? こんな能力もない私がいてもご迷惑だと思います。五百年前に現れた迷い人さんは、どうしたのですか?」



