「竜王様の結婚式は、挨拶がメインですから。みんな竜王様が幸せであることを、この目で確かめたいのですよ。頑張ってくださいね」
「なんだ? 俺とのキスになんの不満があるんだ?」
「わっ!」


 いつの間にか私の隣には、不機嫌そうな顔のリュディカが睨んでいた。


「そこが不満なわけじゃ――」
「まあ、いい。リコにはまだ俺の愛が足りないってことなんだな。そうか、そうか」
「あ! ちょっと、待って!」


(あのニヤッとした顔は、絶対、私に意地悪しようと思ってる!)


 案の定、儀式の後は大変だった。バルコニーに出て集まった人々に手を振って、お祝いの言葉に応える。そのあとはお決まりのキスなんだけど……


(一回のキスが長い!)


 軽くチュッて感じなのかなと勝手に思ってたけど、全然違った。しかもリュディカのキスはどんどんエスカレートしていき、まわりも盛り上がって歓声が止まらない。


「ほら、騎士団や竜たちも、挨拶に来たぞ」
『リコ様! ご結婚おめでとうございます!』
『おめでと』
『僕と結婚するはずだったのに〜』


 目の前にはずらりと竜騎士団のみんなが飛んでいて、私たちに手を振ってくれている。先頭には赤いリボンをつけたヒューゴくん。背中にはもちろんクルルくんも乗っている。その後ろでキールくんがこっちに飛んでこようとするのを、相棒のゲイリーさんが必死に止めていた。