(これじゃ現場のことを無視する、ワンマン社長じゃない!)


「リュディカ! そんなに皆のことを大切にしない王様だったら、結婚はしないわよ?」
「俺を叱る時ばかり、名前を呼ぶのはずるいぞ!」


 リュディカの綺麗で端正な顔が、子どものような表情になる。口をへの字に曲げ、フンと拗ねる表情に私が弱いことをわかっているのかもしれない。


(だって、この顔は私しか見られないんだもん……)


 私はまんまと母性本能をくすぐられ、リュディカの髪を優しく撫で始める。竜の本能で彼の喉から機嫌が良い印である、クルルという音が聞こえてきた。この音も私は弱いのだ。


「はあ……、リュディカ。結婚は私も待ち遠しいけど、シリルさんたちに迷惑をかけるのは嫌なの。日程をもう少し延ばして?」


 そう言って私からキスをすると、リュディカは満面の笑みで私の腰にまわした腕にぎゅっと力を込めた。


「わかった。あと数日くらいは延ばしてもいいだろう!」
「リュディカ! 話聞いてた? んん……!」
「リコからキスしてくれたのだから、お礼をしないとな」


 結局こんな甘いやり取りをしている間にも、シリルさんたちは大急ぎで準備をしてくれ、私たちの結婚式は着々と近づいていくのだった。