「ようやく結婚式の準備に取りかかれるぞ!」


 もちろん部屋に入ってきたのは、疲れた顔のリュディカだ。素早い動きで私を抱きかかえ自分の膝に乗せると、人目も気にせず熱いキスをしてくる。


「んん! 竜王様、ちょっと人が……!」
「おい。リュディカと呼べと言っただろう?」
「とっさには言え……ん……!」


 日に日に甘くなるこの態度に、恋愛初心者の私はついていけない。特に日本人としては、他人がいる前でイチャイチャするのには抵抗があるのだ。しかしそんなことを理解できない彼は、キスに恥ずかしがる私を拗ねた顔で見ている。


「リコは結婚式が待ち遠しくないのか?」
「それは、待ち遠しいですけど……、そういうことじゃなくて、人前でキスは恥ずかしいと言ってるでしょう?」
「もうリディアたちはいないぞ」
「え?」


 キョロキョロと部屋を見回してみると、たしかに護衛の騎士もリディアさんもいない。私たちがキスをしている間に、気を使って外で待機してくれているようだ。


(それはそれで、恥ずかしいのだけど……)


「結婚式は一月後にしたからな」
「え? そんなに早くできるものですか?」
「……なんとかなるだろう」


 そう言うとリュディカは、気まずそうに顔を背けた。これはかなり強引に準備を進めているのだろう。シリルさんや働く人たちの悲鳴が聞こえてくるようで、私は思わず頭を抱えた。