「……良かった。今度は助けることができた」
「竜王様……ありがとうございます。助けてくれて……うれしい」


(本当に、本当に良かった……)


 トクトクと耳に届く彼の胸の鼓動を聞いていると、ホッと力が抜けてくる。今回は本当に死んでしまうと思ったけど、竜王様が助けに来てくれた。


「とりあえず、怪我がないか調べよう」


 今になってカタカタと震えだす私の体を、竜王様が横抱きに運び、柔らかい芝生の上に降ろしてくれた。すると私たちの頭上を小さな竜が、クルクルと円を描くように回っている。クルルくんだ。


『ヒュー! ヒュー!』
「クルルくん!」
『ヒュー!』


 クルルくんは呼びかける私を無視し、一目散に森の奥に飛んでいく。


(そうだ! ヒューゴくん!)


 きっとクルルくんはヒューゴくんを探しているのだろう。私はあわてて竜王様の胸を叩き、話しかけた。


「竜王様、先にヒューゴくんの治療をしてもらえませんか? 私の血では正気に戻すことしかできなくて」
「ああ、わかった。ヒューゴは、この事件の功労者だからな」


 幸いなことに、ヒューゴくんに大きな怪我はなかった。「竜狂い」による体の麻痺が残っていたけれど、それも竜王様の治療ですぐに立つことができた。クルルくんも安心したように、ヒューゴくんの背中に乗って甘える仕草をしている。