竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜



「リコ! 私も行きます」
「リディアさん」


 後ろを振り向くと、リディアさんが心配そうに駆け寄ってきていた。


「ごめんなさい! 私ったら、勝手に飛び出しちゃって」
「いいえ。むしろこちらの説明不足でした。竜王様とリプソン侯爵の関係には、わだかまりが残っているんです。ですからリコにもあのような態度を」
「……過去になにか、あったのですか?」


 私は周囲に誰もいないことを確かめると、小声で話しかけた。


「はい。竜王様が二十歳で国王に就任された時、補佐として選んだのはシリル様でした。その選択に周囲の者は驚き、リプソン侯爵は激しく反対したのです」


 リディアさんは私を竜舎ではなく、王族専用の裏の通路に案内し始めた。私が部屋に戻りたがっているのを、わかっているみたいだ。


「本来ならシリル様は、水晶の守り人と呼ばれる番人の後継者です。竜王様の補佐は代々、リプソン侯爵家から選ばれていました。侯爵も自分か息子が選ばれるだろうと、疑いもしていなかったはずです」


 少し湿った裏通路で過去に起こった出来事を聞いていると、少し気持ちが重くなってくる。私はそんな気持ちを振り払うように、カツカツと靴音を力強く鳴らしていた。