「……もちろんです」
「ありがとうございます! そうそう、迷い人様の能力をお聞きしましたが、大変素晴らしいものですね。特に竜王様や明日決まるお妃様が、大変お喜びになることでしょう!」
「え……?」
(竜王様とお妃様が特に喜ぶ? どういう意味だろう……)
竜王様のほうをチラリと見ると、リプソン侯爵を無表情な顔で見ている。どうみても竜王様が、喜んでいるようには見えない。するとリプソン侯爵は顔を上げ、ニヤリと笑った。
「幼竜と話せる能力を活かすなら、竜王様とお妃様の子どもの乳母になると良いでしょう。次の竜王様の乳母です。とても名誉なことですよ?」
ねっとりとまとわりつくような笑顔に、背中にぞわりと寒気が走る。周囲の人たちも妙な雰囲気に気づいているようだ。侯爵の話に賛成の声をあげるものはいなかった。
「ああ、そうだ! 儀式をお見せすることはできませんが、それを行う水晶の部屋なら私がご案内いたしましょう。お妃様が決定したあとでしたら、乳母として挨拶もできますし、ね?」
「あの、私、クルルの様子を見てきますね!」
もうこのピリピリした雰囲気に耐えられない。話の途中で切り上げるなんてものすごく無作法ではあるけれど、私の足は勝手にヒューゴくんのもとに走り始めた。さっきまで竜の保育園のことで幸せいっぱいだったのに、今はそれさえも考えるのがつらくなる。



