「シーラさんというワンちゃんが死んだと、言っているようなんですが……」
「シーラ? あの子は生きてますが」
『なに? じゃあなんで三ヵ月も姿を現さないんだ! しかも最後に会った時は、苦しそうにヨボヨボと歩いていて……うう、かわいそうなシーラ……』


 竜気が強い領主の言葉は理解できるのだろう。死んだと思っていた犬のシーラが生きていると聞いて、竜のカルルは勢いよく立ち上がった。


 私がすぐさまカルルの言っていることを通訳すると、領主は目を丸くして驚き、シーラに何が起こったのかを叫び始めた。


「それはシーラが妊娠していたからだよ! あの子は今、子育て中で、本館のほうで毎日寝不足だ! おい!誰かシーラを連れてきてくれ!」


 領主のその言葉に、女性があわてて出て行った。犬のシーラちゃんを連れてくるのだろう。しばらくすると予想通りシーラちゃんを抱っこした女性が、竜舎に入ってきた。