勢いよく起き上がりキョロキョロと辺りを見回すと、ドアの近くで立っている女性がいた。私より少し年齢は上くらいだろうか。落ち着いた雰囲気の人で、ブラウンの髪を綺麗に結い上げ、ワンピースにエプロンを着けている。私を見てもニコニコと優しくほほ笑んでいて、一向に睨む気配はない。ここに来てから初めて好意的な態度の人だ。嬉しすぎる。


「リディアと申します。わたくしはリコ様付きの侍女ですので、なんなりと仰せ付けください」
「わ、私に侍女……!」


 なんだかお姫様になったみたいで一瞬ときめいたが、すぐに自分の立場を思い出し、頭を振ってその緩んだ思考を追い出した。


(調子に乗って上げ膳据え膳なんてしてたら、迷い子じゃなかった時が怖い!)


 私は急いでベッドから降りると、お茶の準備を始めたリディアさんのもとに駆け寄った。この人なら私の話を聞いてくれるかもしれない。とにかく生きて日本に帰るためにも、しっかりと「私はワガママなんて言いません!」ということをアピールしておかないと!