混乱して記憶が飛んでいるようだ。彼女はさっきまでの怖ろしい体験を覚えていないようで、不思議そうに話している。


「リコ! とにかく俺のところに来い!」
「は、はい!」


 やっぱりリコだ。まだ姿は見えないが、リコは俺が命令すると元気よく返事をする癖がある。俺は早く顔が見たくて、竜のもとに駆け寄った。すると二頭の隙間から、にゅっと小さな手が現れた。


 俺がその手をつかむと、おかしくなっていた竜が、リコの背中を鼻先で押していた。立つのを手伝っているのだろうか。リコは少しよろめきながら、竜たちの間から出てくると、パンパンとスカートの埃を払っている。


「よいしょっと……。わあ、ありがとう。立たせてくれたの? え? そ、それは無理だよ」


 そこに立っていたのは、まぎれもなくリコだった。髪はボサボサでドレスも埃まみれになって、恥ずかしそうにしている。そんなリコの姿を見て、俺は今まで感じたことがない想いに突き動かされていた。