(おかしい。そんなに遠くに行けるわけないのだが、どこに隠れたんだ!)


 シュウシュウと口から竜気を出しながら周囲を探すも、リコを捕まえた竜の姿が見つからない。競技場のまわりは森になっているから、そこに隠れたのだろうか。もしかしたら、俺の出した竜気に当てられ、飛ばされてしまったのかもしれない。


『どこだ! どこにいる!』


 リコはたしかにあの竜の口の中に入った。しかもあの竜は正気を失っていたのだ。たとえ見つかったとしても、相棒の騎士さえも噛みつく状態では、リコが五体満足でいられない可能性が高い。


 そう考えると、胸の奥からドロドロとした熱い塊が押し寄せてくる。今まで味わったことがない苦しさ。渇望。全身がリコを欲して、暴れだそうとしていた。