竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜



 そんなことを思い出していると、胸の奥がじんと熱くなってくる。するとその熱をもっと熱くするような声が聞こえてきた。


『パパ、やさしい〜! ママ、パパのこと、好きになってきた? 結婚したい?』
「えっ! な、なにを言って……!」
「リコ? どうしました?」


 突然の卵くんの発言に、思わず声に出してしまっていた。幸運にもリディアさんは片付けのため、私と離れている。はっきりとは聞こえてなかったようで、不思議そうに私を見ていた。


「大丈夫です! ちょっと寝ぼけたというか、とにかく平気です!」


 危ない。ぼうっとしていると、お腹に竜王の卵がいることを忘れてしまう。この子は注意しても話しかけてくるから、惑わされないようにしないと。特に今日は絶対にバレちゃダメな日なんだから!


(さっきみたいな下手な言い訳なんてしたら、変な人だと思われちゃうよ)


 私がそんな心配をしていると、さっきの発言がおかしかったのだろう。片付けを終えたリディアさんが、クスクス笑いながら部屋の扉を開けた。